Research Projects
脳機能の仕組みを知り、異常時の変化を検出し、治療を目指す取り組みを行っています。
現在、3つのプロジェクトを進行しています。
1) 発生期の脳の形成と分子基盤
2) 認知症と骨髄移植
3) 脳損傷と機能補完

発生期の脳の形成と分子基盤
脳の奥深くで生まれた幼弱な神経細胞は、生まれた直後に脳の浅い部分に向かって移動を開始します。そして、正しい場所まで移動したのち、適切な神経回路形成を行います。これはもともと神経細胞に備わった本能のようなものですが、どうして正しい場所まで行けるのか、互いに結びつく相手をどのように決めるのか、そのメカニズムにはまだわからないことが多く残されています。私たちは、胎児期の脳の形成過程を研究することで、神経ネットワーク形成の基盤を明らかにしたいと考えています。

認知症と骨髄移植
近年、急速に進行する高齢化に伴い、認知症やアルツハイマー病に対する治療薬の開発がますます重要になっています。認知症は、症状が顕在化する数十年前から病態が進行していると考えられており、その発症を予防することは現在のところ非常に困難です。発症の原因についてはさまざまな研究が行われていますが、私たちは認知症に関与する血中成分に着目し、発症のメカニズムと病態改善の可能性を明らかにすることを目指しています。その一環として、血球を産生する骨髄由来の造血幹細胞を用い、血中成分の変化が脳機能の正常化に与える影響について研究を進めています。

脳損傷と機能補完
脳の機能や神経回路には柔軟性があり、楽器の演奏やスポーツなど、本人の意図する行動を可能にするように変化する能力を備えています。しかし、その神経基盤は未だ十分には解明されていません。私たちは、神経細胞の遺伝子発現や神経活動の変化、神経回路の再編成といったプロセスを通じ て、こうした機能向上の仕組みを明らかにしたいと考えています。その一環として、脳の一部が損傷した際に、他の脳領域でどのような変化が生じ、それが新たな脳機能の獲得や回復にどのようにつながるのかという現象に着目し、研究を進めています。
最近の論文・総説

Front Neurosci. 2024 Apr 17:18:1360432.
Yagishita et al. developed an in vivo electrophysiology-based single-cell RNA sequencing approach to reveal that gene expression profiles in hippocampal pyramidal neurons are significantly correlated with their spike properties, providing a framework for linking neuronal physiology and transcriptional identity.

Nat Commun. 2024 Feb 1;15(1):458.
We show that DSCAM in Purkinje cells regulates cerebellar synapse formation and function by interacting with the astrocytic glutamate transporter GLAST, thereby coordinating glutamate clearance and synaptic organization at peri-synaptic contacts.

Sci Adv. 2020 Sep 2;6(36):eaba1693.